自筆証書遺言については、民法第968条によって以下のように定められています。
※参考※
(自筆証書遺言)
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第978条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録も含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
自筆証書遺言を作成する場合には、必ず上記の要件を押さえて書かなければなりません。
では、これらの要件を具体的に説明していきます。
全文とは、遺言事項を書き記した本文の事を指します。尚、財産目録については自書を要しませんので、パソコン等で作成することもできます。但し、その場合は、財産目録の各ページに署名・押印が必要となります。
注意点として、他人が添え手などの補助をしてしまうと無効となる場合があります。手が震えてうまく字が書けない等の問題がある場合は、公正証書遺言に変更したほうがいいでしょう。
日付に関しては、「令和〇年〇月〇日」のように、「年月日」をしっかりと記載しましょう。例えば、「令和元年5月吉日」のような書き方ですと、日付の特定ができずに無効となる恐れがあります。また、日付も「自書」が要件ですから、日付印等を使用した場合も無効となります。
指名に関しては、ペンネームや雅号等の通称でもよいという判例があります。しかし、通称ですと遺言執行が困難になることが予想されます。やはり、戸籍のとおりに記載することが望ましいでしょう。
印の形式については特段の定めはないので、認印でかまいません。しかし、遺言の信憑性を高めるためにも「実印」(実印がない場合は、金融機関届出印)の押印が望ましいでしょう。
加除・変更の方式については、法によって(民法968条3項)厳格な定めがあります。この方式に反した場合、無効となる恐れがあります。書き損じが生じた場合、原則として、破棄して新たに書き直すことをお勧めします。
封書も遺言者本人がすべて自書し、印鑑についても本文で使用したものと同一の印を使用しましょう。尚、遺言書保管所に保管を申請する場合は、保管の申請の際に、遺言書保管官が遺言書についての外形的な確認をするため、「無封」でかまいません。
※法的な要件ではありませんが、遺言書の用紙が2枚以上になる場合、ホチキスで留め、つなぎ目に「遺言書に押印した同じ印」で印を押しましょう。
財産目録とは、ご自身の不動産や預金等の財産をわかりやすくまとめた表のようなものです。特に決められた書式はなく、箇条書きでも何でも構いません。今までは、遺言書と同様に自書であることが有効となる条件でしたが、法改正により、財産目録についてはパソコンでの作成が可能となりました。ただし、自書ではない財産目録の場合、すべてのページに署名・押印(※遺言者様ご本人のものであれば実印である必要はありません)が必要となりますので注意しましょう。また、訂正がある場合は遺言書と同様に、変更した場所への押印と変更した旨の付記がなければ無効となってしまいますので併せて注意が必要です。
自筆証書遺言を作成するにあたって、財産目録の作成は必須ではありません。しかし、財産目録を添付することで、以下のようなメリットがあります。
以上のように、財産目録には様々なメリットがあります。遺言書作成の際には合わせて財産目録も作成するようにしましょう。
記載例